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江戸堀 若木
本格的な自家製手打ち蕎麦の店である。場所は大阪の北 ビジネス街の中心にあり、この店もテナントビルの1階に入っている。
そば打ち職人でもある店主は蕎麦に対して真摯に取り組まれ、誠実に美味しい蕎麦を提供しようと考えておられた。私がすべき事は、この姿勢を素直にデザインに写し込み、客にこの思いを伝える最良の環境を提供することだ。きちっとした素材でつくり、使い続ける事で味が出て、記憶の断片になるような店である。
飲食店は中の様子が分からないと入りづらい。しかし中に入ってしまうと今度は外の人と距離を置いて欲しくなる。若木ではそれらを窓の意匠でカバーしている。 行灯をモチーフにした窓はアイキャッチとして設えられているが、客にとっては外光を取り入れながらアイレベルでの視線の交差を遮り、上下に振り分けられたスリット部分から外の様子を窺えるようにしている。
そして客席は入口から奥まり独立した溜まりにしている。動線を考えると入口、客席、調理場の順なのだが食事の為の空間を優先した。客を隠す間仕切り壁もスタッフの立場からは余計なものだろう。しかし、落ち着いた雰囲気の、お客さんにとっての居場所としての空間を造りたかった。
この店で多くの方々が蕎麦を楽しんでくれるだろう。設計の細かい事はどうでもいい、「 美味しかった」「 いい店だった」とだけ思ってもらえればそれでいい。
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